酸化と還元



陶芸の焼成には2種類ある。
「酸化」と「還元」だ。

前者は電気窯で起こる。後者はガス窯、薪窯で起こる。
酸化焼成は、空気が十分にある状態で焼かれるので、釉薬の色が安定する。一方、還元焼成は空気が少ない状態で焼かれる。この状態で還元という、物質から電子を奪い取る化学現象が起きる。これはとても不安定な反応で、釉薬の色が不思議に変化する。色のムラも生じる。

ガス窯や薪窯で焼成すると、空気が十分に取り込まれない焼成が生じるので、硫黄を発生させたりする。だから、街中でこの窯を使うというのが非常に難しい。周囲の家からクレームが出るそうだ。だから、ガス窯や薪窯、つまり陶芸の窯元は必然と田舎に存在する。

陶芸において、この還元焼成こそが、魅力的な釉薬の色合いを出すポイントとなる。残念ながら、電気釜で焼いた陶器は、色合いはムラがなく、絵の具で塗ったようにきれいに発色はするが、色合いの偶然の妙味に欠ける。

織部、空色、青銅色、釉薬を薄くかけるなど、それぞれ試行錯誤してみたが、やはり電気窯で焼く色合いには限界があるようだ。

窯元によっては、ガス窯、薪窯で焼く作業を請け負っているところもあるらしく、いつかこの還元焼成に挑戦してみたい。理想の色を求めて。


さて、この還元という化学反応だが、陶芸の世界だけでなく、ワインの世界にもよく聞かれる。ワインが発酵する時、十分な酸素がないと、還元状態におかれる。すると、硫黄臭がするのだ。

従来、こうした硫黄臭が発生するような還元は欠陥品と考えられていた。特に自然派と言われるワインには、こうした管理が行き届かないまま発酵を行うことで、ともすれば飲めたものではないような発酵がされていたこともあるそうだ。

今では、この還元が1つの特徴として、うまく発酵させた自然派ワインもある。不安定だからこその妙味。陶芸もワインも同じである。世の中は、安定したものばかりでは、多様性が失われるのと同じことなのかもしれない。

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