インゲヤード・ローマン展メモ


スウェーデンを代表するガラスデザイナーで、陶芸家としても知られるインゲヤード・ローマン展。

展覧会の中で、インゲヤード・ローマン本人のインタビュービデオが流されており、いくつか気になったことをメモしておく。



デザインの始まりは自分

インゲヤード・ローマンのデザインは、すべてシンプルで、自分が使いたいものを作る、ところから始まる。

人は年齢と共にイベントがあり、それと共にニーズも変わる。結婚や出産、別離。
歳をとるごとに、多くの人と食事をすることを好まなくなったり、食べる量も減ったりする。
そうしたニーズの変化に応じて、何を作るかを考えるそうだ。

自分のつくりたいと思う「欲」こそが、芸術なのだろう。
ただ自分のためにつくる、それが周囲から認められて、芸術となる。
そういうものらしい。



水とガラス

インゲヤード・ローマンが、イタリアに留学していた時代、食卓には常にコップに入った水が用意されていた。今では珍しくなくなったのかもしれないが、こうした文化はイタリアならではだったという。

そして、食事には水を用意することは習慣化されたという。冷蔵庫には、常にガラスのカラフェを入れているという。だから、インゲヤード・ローマンの作品には、ガラスのカラフェが多い。

特徴的なのは、カラフェに被されたコップだ。コップがカラフェの蓋の役割を果たす。
子供の頃、インゲヤード・ローマンは、叔父から冷たい水を柄杓でもらっていたという。柄杓は、共同のものなので、直接口にすることはできない。それでも、その冷たい水をすぐに飲みたかった。

そうした記憶から、カラフェの蓋として、コップがデザインされた。いつも、冷蔵庫からカラフェを取り出して、すぐにコップで水が飲めるようにと。

芸術家の作品とは、自らの記憶に由来するものでもあるそうだ。




展覧会では、インゲヤード・ローマンが、度々訪れた有田で作られた作品も展示されていた。白い磁器は、どこか日本風でもあり、北欧風でもある。


デザインとは何か。芸術とは何か。何が芸術をもたらすのか。
そうしたことを考えさせる展覧会でした。





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